2015年6月28日日曜日

喘息患者のエクササイズ参加

喘息患者のエクササイズ参加


  • 気道過敏症:AHR
  • 運動誘発性気管支収縮:EIB 定義「臨床的に認識された喘息の有無にかかわらず、運動に関連して生じる気道閉塞」
  • 運動誘発性喘息:EIA
  • 気道平滑筋:ASM
  • 1秒間に吐き出された空気量:FEV1


気道過敏症の誘因となるエクササイズは、喘息患者の気道抵抗を高め、それによって運動誘発性気管支収縮という厄介な症状を引き起こす。


○主な喘息の表現型
主な表現型
特徴
アレルギー性(アトピー型)喘息
アレルゲンに対する感作が促進している
非アレルギー性喘息
アレルギー感作、平滑筋の被刺激性、過形成、気道平滑筋細胞の収縮機能の異常が認められない
アスピリン喘息
アスピリンおよびその他の非ステロイド薬に対するアレルギー反応
感染性喘息
気道感染症に関連した喘息
運動および過換気誘発性喘息
気道粘膜の浸透圧の変化
前喘息期喘息
ウイルス、風邪、遺伝的傾向、環境タバコ煙への曝露
増悪頻発性喘息
増悪の発現頻度に基づく
好酸球性喘息および好中球性喘息
(炎症性メディエータ優位)
好酸球または好中球の増加による(コルチコステロイド反応性の)気道炎症
非好酸球性喘息
好酸球性喘息ににているが、コルチコステロイド反応性ではない気道炎症


○喘息の時間的特性


アレルギー性喘息による炎症は、アレルゲン曝露後に即時に現れる反応と、遅発的に表れる反応に分けられる。


  • アレルゲ曝露から数分以内に異常な気管支収縮を引き起こし、多くの場合、最初の曝露から2-3時間以内にピークに達する。


  • 遅発反応は喘息患者の約60%に認められ、最初のアレルゲ曝露から3-7時間で生じ、最大24時間継続し、気道炎症が長時間続くことにより、進行性かつ長引く気管支収縮を引き起こす。


○気道平滑筋


気道過敏症:AHRにおける気道狭窄の一因となる気道平滑筋:ASMの収縮について、収縮をもたらす特異的メカニズム。


  • EIBを有する人が激しい身体活動を行った場合、最初の3-5分はあまり影響が出ないが、その後、肺機能が急速に低下し症状が増加する。
  • EIBにおける急性気管支収縮は通常、運動停止からごく短時間(3-15分)でピークに達し、多くの場合20-60分以内に自然に治まる。
  • 一度EIBが起こって回復した後は、40分ー3時間の不応期が訪れ、この間にさらなるエクササイズを行っても、EIB患者の約半数が気管支収縮を越こしにくくなる。


  • この不応期をエクササイズ前のウォームアップルーティン(最大酸素摂取量または最大心拍数に近い強度で実施)を使って操EIBの重症度をある程度下げられる。


コントロール方法:
エクササイズ前のウォームアップにおいてエクササイズ強度を段階的に上げていき、コントロール可能なレベルの気管支痙攣を誘発する(軽度の喘息発作を引き起こす)ことで、続く不応期をトレーニングやスポーツの試合といった高強度運動への耐性を高める方策として利用することは、コントロール可能な喘息患者には有効である。


注意:EIBを有する一部であるが
  • 身体活動停止から4-12時間後に症状をぶり返す(遅発型反応)も認識。
  • 遅発型反応は通常、重症度は軽いが、持続時間が長く最大24時間に及ぶ。


○運動誘発性気管支収縮の診断


標準的な負荷試験実施後における連続FEV1(1秒間に吐き出された空気量)値の10%以上の低下が、EIBの診断閾値である。


運動負荷試験のプロトコル
米国胸部疾患学会が採用するEIB診断の標準的運動負荷試験のプロトコル
試験の絶対的禁忌
 重度の気流制限(FEV1が予測値の50%未満または1リットル未満)
 過去3ヵ月間に心臓発作または脳卒中の既往
 コントロール不良の高血圧(収縮期血圧が200以上、または拡張期血圧が100未満)
 既知の大動脈瘤
 不安定な心虚血
 悪性不整脈(60歳以上は、過去1年以内に測定した12誘導心電図が必要)
試験の相対的禁忌
 中等度の気流制限(FEV1が予測値の60%未満または1.5L)
 良質な肺活量測定を行えない
 妊婦または授乳期の女性
器具
 傾斜調整可能なトレッドミル、ブレーキ調整可能なエクササイズバイク(室内)、フィールドテスト(通常は野外)
時間
 年長の子供/成人は8分
強度
 目標心拍数=80-90%最大心拍数(220-年齢または208-0.7×年齢)で最低4-6分。
 最初の2-3分だ徐々に心拍数を目標まで上げる
 運動強度は、6-8分以上の運動継続が困難な程度とする。8分以上の継続可能な場合は、強度がEIBを引き起こすのに不十分であることを示唆する。
 目標心拍数が最低4分維持されれば運動終了
測定事項
 運動前と運動後3分、5分、10分、15分,20分のFEV1
結果の解釈
 運動後の連続測定において、FEV1が前時点から10%以上低下すればEIBと診断


○喘息患者のトレーニング


  • コントロールされた喘息患者の大多数は、短時間作用型気管支拡張薬などの適切な治療薬を医師の指示を守って使用。
  • 各自にあったウォームアップやクールダウンを通じAHRをコントロールすれば、高強度のフィジカルトレーニングやコンディショニングプログラムを長期的に継続し耐性を高めることが可能。


○有酸素性エクササイズ


十分にコントロールされた重症度が軽ー中等症の喘息患者の有酸素性エクササイズ(ウォーキング、自転車運動、水泳、軽いジョギングなど大筋群を動員する身体活動)。


  • 週2-5日、50-75%最大強度で実施することを推奨
  • Borg のCR-10息切れスケールの3-4の範囲で実施
  • 心肺機能を向上させる妥当な目標。


  • 高強度エクササイズの実施中やエクササイズプログラム終了時にEIBを発症リスクを軽減するため、低強度の有酸素性運動によるウォームアップとクールダウンを毎回最低10-15分実施する。


最新研究)
有酸素性トレーニングをエクササイズプログラムに組み込むことで、換気性作業閾値の改善(低ー中強度エクササイズ実施中の分時換気量の減少)、肺機能(VO2max)の向上、息切れの改善を促すことが可能。


Borg のCR-10息切れスケールを用いてエクササイズ中の息切れを評価。
目標運動強度のコントロールとモニタリング、呼吸困難に対する不安感の軽減するための妥当性と信頼性の高い方法。


○主観的呼吸困難(息切れ)の修正Borgスケール
0
感じない
0.5
非常に弱い
1
やや弱い
2
弱い
3
中等度
4
多少強い
5
強い
6

7
とても強い
8

9
非常に強い(ほぼ最大限に)
10
最大限


○レジスタンストレーニング


低負荷、多レップのエクササイズを用いることでEIBの誘発リスクを抑え、安全にレジスタンストレーニングを実施し筋機能を高めることができる。


  • 週2-3回
  • 低強度(主観的運動強度10段階のBorgスケールで5-6)
  • 多レップ(10-15レップ×2-4セット)
  • 大筋群を動員するエクササイズ、休息時間を長く(セット間3-4分)


  • 十分な長さのウォームアップとクールダウンを実施し、EIBの発症リスクを低減する。



Vol.22 Num.5 Jun2015 p37-p48

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