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2015年7月17日金曜日

線維筋痛症の運動処方

線維筋痛症の運動処方


線維筋痛症は、関節、筋、腱、軟部組織など全身の様々な構造を侵す慢性疼痛疾患である。
35-60歳の女性に好発する。


最新仮説)
線維筋痛症は中枢神経系の神経科学物質のアンバランスによって引き起こされ、そのアンバランスが疼痛知覚の高まりを伴うと考えられる。
刺激に対する感受性の高まり、異痛症と、疼痛性刺激に対する反応の高まり、痛覚過敏症が発生すると考えられる。


線維筋痛症の診断基準)
  • 3ヵ月以上にわたって体軸部の痛みを伴う。
  • 腰の上部および下部の広範囲にわたる両側性の慢性疼痛を示す。
  • 圧痛点が18ヵ所の内11ヵ所で痛みを感じる場合は線維筋痛症と診断される。(写真)
  • 深部痛、電撃的な灼熱痛の訴え、場合によっては疲労感や睡眠障害。

(写真はネットから拾いました)


その他の兆候や症状)
  • うつ、不安、認知障害、集中力の欠如、平衡障害、過敏性腸症候群、頭痛、圧痛、こわばり、刺痛と麻痺、むずむず脚症候群など


関連する危険因子)
  • 第一度近親者に発症者がいる場合に最もリスクが高まる家族性因子。
  • 身体的外傷
  • ストレス
  • C型肝炎などの感染症


線維筋痛症のための運動ガイドライン
介入方法
提案される推奨基準
有酸素性エクササイズ
頻度:週2-3回
強度:軽度ー中度
時間:20-30分
継続期間:最低4週間
レジスタンストレーニング
頻度:週2-3回
強度:40ー80RM
レップ数:1-3セット×5-20レップ
継続期間:12-21週間
アクアエクササイズ
頻度:週3回
強度:年齢推定最大心拍数50-80%
時間:30-60分
継続期間:16週間
日常的身体活動
頻度:週5-7日
強度:中度
時間:1日最低30分
継続期間:12週間
ピラティス
頻度:週3回
強度:クライアントの機能レベルに応じて決定
時間:60分
継続期間:12週間
太極拳
頻度:週2回
強度:クライアントの機能レベルに応じて決定
時間:60-90分
継続期間:12週間
ヨガ
頻度:週2回
強度:クライアントの機能レベルに応じて決定
時間:60-90分
継続期間:8週間
全身振動トレーニング
頻度:週3回
強度:クライアントの機能レベルに応じて決定
時間:45-60秒×数回
レップ数:6回
継続期間:6-12週間



Vol 22 Num 5 Jun2015 p61-p67

2015年7月8日水曜日

股関節形成術(HA:hip arthroplasty)のエクササイズ

関節置換術(関節形成術)は保存療法では治療できない股関節の痛みや障害を抱える患者に選択可能な外科的介入方法。


後外側アプローチ
  • 股関節後方側面を最大20cm切開して行う。
  • 術後の股関節の機能および回復に関して従来の方法より優れているとは言えない結論が出ている。
  • 前方から行う他の術式に比べ、手術後に脱臼の発生率が高い。


直接前方アプローチ(前部切開法)
  • 後方側アプローチのような侵襲的な術式と比べると、股関節の不安定性や脆弱性が生じる可能性は低い。


○術後のリハビリテーションと退院の基準


通常、患者が補助器具を使って、または使わずに安全に移動でき、エクササイズプログラムを独力で遂行でき、活動中のすべての注意事項を守ることができるとみなされ、理学療法士による介入の必要のないと考えられる時点で患者は自立している。


○エクササイズの検討事項


後遺症
  • 最も可能性の高い後遺症と予防措置に関する実践的知識が計画の枠組みに必要。
  • HA後の身体機能をみると、患者はHA後最長2年程度は階段を上がる能力に限界があり、歩幅が狭く歩行速度も低下する。
  • 障害に関しては、股関節の伸展および外旋可動域の減少がしばしば確認される。


  • 後外側アプローチを受けたクライアントは90°以上股関節を屈曲させるいかなる活動を避ける


注意事項
  • 脱臼する可能性が高いことや、人工関節の早期摩耗につながる活動を制限する必要。


脱臼
  • 手術中に後外側アプローチは屈曲、内旋および外転を組み合わせた位置で股関節を外すため、手術後にこれらの動作を行うことで脱臼の危険性にさらされる可能性。
  • 低い腰掛に座るような姿勢やスクワット姿勢は、後外側アプローチ後股関節脱臼の原因である。


後外側アプローチ後
  • 一定期間、単独か複合的な動作にかかわらず、股関節を90°以上屈曲する運動や正中線を超えた内転および内旋を避ける。(写真)
  • 股関節が90°以上屈曲するスクワットや中腰などの動作を避ける。(写真)


禁忌
禁忌
(写真はネットから拾いました)

前方アプローチ後
  • 脱臼のリスクが大幅に低下。
  • 前方からの手術後には活動制限が通常不要。
  • 活動上の注意を実践しなくても、脱臼のリスクに変化がない報告。


人工関節の摩耗と緩み
  • 高い衝撃を有する活動は最も避けるべき活動と指摘されてることに注意。


○エクササイズプログラムの作成


レジスタンストレーニング


  • 1RMの決定に5-10RMを測定して変換式か推定表を用いる。
  • 50%1RMから始め6-8週間かけて80%1RMまで高める。
  • 各エクササイズを2-4セット
  • 週2-3回
  • 休息時間はセット間で2-3分(筋力の最大化が目的)


心臓血管系エクササイズ


  • 手術後の最初の8週間は、中強度でゆっくりと長距離を走る。
  • 開始当初は予備心拍数の40-60%で時間をかけて漸進的に増加させる。


目標
  • 1日に合計20-30分の中程度の有酸素性エクササイズが必要。
  • 1回に耐えられるのは5-10分程度であるため、短い有酸素性エクササイズを1日に数回行う必要。


  • 体力のあるクライアントは、通常全体で20-30分の有酸素性エクササイズを通して行うことができる。
  • 週5日程度行う。


柔軟性エクササイズ


  • 股間節の伸展、外旋可動域の不足が長く残存する可能性が示唆されている。


  • 柔軟性エクササイズは、可動域に関する注意を尊重し3つの身体平面すべてで行うことが理想。
  • 軽いストレッチ感を感じるところで約10秒間その姿勢を保持。
  • 各平面で数セットを行う。
  • 10-15秒の休息を挟む。
  • 1日に2回、週3回の柔軟性ルーティンで、毎日ストレッチングを行うのと同程度に効果がある。


○レクリエーションレベルのスポーツやエクササイズの復帰


  • 人工関節の摩耗と構成部品の緩みは活動量や活動強度と直接関係がある
  • 高レベルの活動への参加はリスクがないとはいえない。
  • 人工関節の不具合の原因は多岐にわたるが、部品の緩みや摩耗は間違いなく負荷の大きさと頻度に関係がある。


専門家の一致した意見として、手術の3-6 ヵ月後にレクリエーションレベルのスポーツ活動を再開することが推奨


クライアントの要求と希望に合わせて、特定のすでに習熟している活動への段階的な復帰を検討することを勧められる。


  • 90%以上の専門医が手術前に経験があれば許容される活動


ゴルフ、水泳、テニスのダブル、ハイキング、野外サイクリング、ダンス、ボウリング、低インパクトのエアロビクス、トレッドミル、ウェイトマシーン、ステーショナリーバイクなど


  • 50%以上の専門医が推奨しなかった活動


ジョギング、武術、テニスのシングル、コンタクト競技、中強度から高強度の有酸素性運動、スノーボード、ラケットボール、スカッシュ、野球、ソフトボールなど



Vol 22 Num 5 Jun 2015 p49-p58

2015年6月28日日曜日

喘息患者のエクササイズ参加

喘息患者のエクササイズ参加


  • 気道過敏症:AHR
  • 運動誘発性気管支収縮:EIB 定義「臨床的に認識された喘息の有無にかかわらず、運動に関連して生じる気道閉塞」
  • 運動誘発性喘息:EIA
  • 気道平滑筋:ASM
  • 1秒間に吐き出された空気量:FEV1


気道過敏症の誘因となるエクササイズは、喘息患者の気道抵抗を高め、それによって運動誘発性気管支収縮という厄介な症状を引き起こす。


○主な喘息の表現型
主な表現型
特徴
アレルギー性(アトピー型)喘息
アレルゲンに対する感作が促進している
非アレルギー性喘息
アレルギー感作、平滑筋の被刺激性、過形成、気道平滑筋細胞の収縮機能の異常が認められない
アスピリン喘息
アスピリンおよびその他の非ステロイド薬に対するアレルギー反応
感染性喘息
気道感染症に関連した喘息
運動および過換気誘発性喘息
気道粘膜の浸透圧の変化
前喘息期喘息
ウイルス、風邪、遺伝的傾向、環境タバコ煙への曝露
増悪頻発性喘息
増悪の発現頻度に基づく
好酸球性喘息および好中球性喘息
(炎症性メディエータ優位)
好酸球または好中球の増加による(コルチコステロイド反応性の)気道炎症
非好酸球性喘息
好酸球性喘息ににているが、コルチコステロイド反応性ではない気道炎症


○喘息の時間的特性


アレルギー性喘息による炎症は、アレルゲン曝露後に即時に現れる反応と、遅発的に表れる反応に分けられる。


  • アレルゲ曝露から数分以内に異常な気管支収縮を引き起こし、多くの場合、最初の曝露から2-3時間以内にピークに達する。


  • 遅発反応は喘息患者の約60%に認められ、最初のアレルゲ曝露から3-7時間で生じ、最大24時間継続し、気道炎症が長時間続くことにより、進行性かつ長引く気管支収縮を引き起こす。


○気道平滑筋


気道過敏症:AHRにおける気道狭窄の一因となる気道平滑筋:ASMの収縮について、収縮をもたらす特異的メカニズム。


  • EIBを有する人が激しい身体活動を行った場合、最初の3-5分はあまり影響が出ないが、その後、肺機能が急速に低下し症状が増加する。
  • EIBにおける急性気管支収縮は通常、運動停止からごく短時間(3-15分)でピークに達し、多くの場合20-60分以内に自然に治まる。
  • 一度EIBが起こって回復した後は、40分ー3時間の不応期が訪れ、この間にさらなるエクササイズを行っても、EIB患者の約半数が気管支収縮を越こしにくくなる。


  • この不応期をエクササイズ前のウォームアップルーティン(最大酸素摂取量または最大心拍数に近い強度で実施)を使って操EIBの重症度をある程度下げられる。


コントロール方法:
エクササイズ前のウォームアップにおいてエクササイズ強度を段階的に上げていき、コントロール可能なレベルの気管支痙攣を誘発する(軽度の喘息発作を引き起こす)ことで、続く不応期をトレーニングやスポーツの試合といった高強度運動への耐性を高める方策として利用することは、コントロール可能な喘息患者には有効である。


注意:EIBを有する一部であるが
  • 身体活動停止から4-12時間後に症状をぶり返す(遅発型反応)も認識。
  • 遅発型反応は通常、重症度は軽いが、持続時間が長く最大24時間に及ぶ。


○運動誘発性気管支収縮の診断


標準的な負荷試験実施後における連続FEV1(1秒間に吐き出された空気量)値の10%以上の低下が、EIBの診断閾値である。


運動負荷試験のプロトコル
米国胸部疾患学会が採用するEIB診断の標準的運動負荷試験のプロトコル
試験の絶対的禁忌
 重度の気流制限(FEV1が予測値の50%未満または1リットル未満)
 過去3ヵ月間に心臓発作または脳卒中の既往
 コントロール不良の高血圧(収縮期血圧が200以上、または拡張期血圧が100未満)
 既知の大動脈瘤
 不安定な心虚血
 悪性不整脈(60歳以上は、過去1年以内に測定した12誘導心電図が必要)
試験の相対的禁忌
 中等度の気流制限(FEV1が予測値の60%未満または1.5L)
 良質な肺活量測定を行えない
 妊婦または授乳期の女性
器具
 傾斜調整可能なトレッドミル、ブレーキ調整可能なエクササイズバイク(室内)、フィールドテスト(通常は野外)
時間
 年長の子供/成人は8分
強度
 目標心拍数=80-90%最大心拍数(220-年齢または208-0.7×年齢)で最低4-6分。
 最初の2-3分だ徐々に心拍数を目標まで上げる
 運動強度は、6-8分以上の運動継続が困難な程度とする。8分以上の継続可能な場合は、強度がEIBを引き起こすのに不十分であることを示唆する。
 目標心拍数が最低4分維持されれば運動終了
測定事項
 運動前と運動後3分、5分、10分、15分,20分のFEV1
結果の解釈
 運動後の連続測定において、FEV1が前時点から10%以上低下すればEIBと診断


○喘息患者のトレーニング


  • コントロールされた喘息患者の大多数は、短時間作用型気管支拡張薬などの適切な治療薬を医師の指示を守って使用。
  • 各自にあったウォームアップやクールダウンを通じAHRをコントロールすれば、高強度のフィジカルトレーニングやコンディショニングプログラムを長期的に継続し耐性を高めることが可能。


○有酸素性エクササイズ


十分にコントロールされた重症度が軽ー中等症の喘息患者の有酸素性エクササイズ(ウォーキング、自転車運動、水泳、軽いジョギングなど大筋群を動員する身体活動)。


  • 週2-5日、50-75%最大強度で実施することを推奨
  • Borg のCR-10息切れスケールの3-4の範囲で実施
  • 心肺機能を向上させる妥当な目標。


  • 高強度エクササイズの実施中やエクササイズプログラム終了時にEIBを発症リスクを軽減するため、低強度の有酸素性運動によるウォームアップとクールダウンを毎回最低10-15分実施する。


最新研究)
有酸素性トレーニングをエクササイズプログラムに組み込むことで、換気性作業閾値の改善(低ー中強度エクササイズ実施中の分時換気量の減少)、肺機能(VO2max)の向上、息切れの改善を促すことが可能。


Borg のCR-10息切れスケールを用いてエクササイズ中の息切れを評価。
目標運動強度のコントロールとモニタリング、呼吸困難に対する不安感の軽減するための妥当性と信頼性の高い方法。


○主観的呼吸困難(息切れ)の修正Borgスケール
0
感じない
0.5
非常に弱い
1
やや弱い
2
弱い
3
中等度
4
多少強い
5
強い
6

7
とても強い
8

9
非常に強い(ほぼ最大限に)
10
最大限


○レジスタンストレーニング


低負荷、多レップのエクササイズを用いることでEIBの誘発リスクを抑え、安全にレジスタンストレーニングを実施し筋機能を高めることができる。


  • 週2-3回
  • 低強度(主観的運動強度10段階のBorgスケールで5-6)
  • 多レップ(10-15レップ×2-4セット)
  • 大筋群を動員するエクササイズ、休息時間を長く(セット間3-4分)


  • 十分な長さのウォームアップとクールダウンを実施し、EIBの発症リスクを低減する。



Vol.22 Num.5 Jun2015 p37-p48