関節置換術(関節形成術)は保存療法では治療できない股関節の痛みや障害を抱える患者に選択可能な外科的介入方法。
後外側アプローチ
- 股関節後方側面を最大20cm切開して行う。
- 術後の股関節の機能および回復に関して従来の方法より優れているとは言えない結論が出ている。
- 前方から行う他の術式に比べ、手術後に脱臼の発生率が高い。
直接前方アプローチ(前部切開法)
- 後方側アプローチのような侵襲的な術式と比べると、股関節の不安定性や脆弱性が生じる可能性は低い。
○術後のリハビリテーションと退院の基準
通常、患者が補助器具を使って、または使わずに安全に移動でき、エクササイズプログラムを独力で遂行でき、活動中のすべての注意事項を守ることができるとみなされ、理学療法士による介入の必要のないと考えられる時点で患者は自立している。
○エクササイズの検討事項
後遺症
- 最も可能性の高い後遺症と予防措置に関する実践的知識が計画の枠組みに必要。
- HA後の身体機能をみると、患者はHA後最長2年程度は階段を上がる能力に限界があり、歩幅が狭く歩行速度も低下する。
- 障害に関しては、股関節の伸展および外旋可動域の減少がしばしば確認される。
- 後外側アプローチを受けたクライアントは90°以上股関節を屈曲させるいかなる活動を避ける。
注意事項
- 脱臼する可能性が高いことや、人工関節の早期摩耗につながる活動を制限する必要。
脱臼
- 手術中に後外側アプローチは屈曲、内旋および外転を組み合わせた位置で股関節を外すため、手術後にこれらの動作を行うことで脱臼の危険性にさらされる可能性。
- 低い腰掛に座るような姿勢やスクワット姿勢は、後外側アプローチ後の股関節脱臼の原因である。
後外側アプローチ後
- 一定期間、単独か複合的な動作にかかわらず、股関節を90°以上屈曲する運動や正中線を超えた内転および内旋を避ける。(写真)
- 股関節が90°以上屈曲するスクワットや中腰などの動作を避ける。(写真)
禁忌
禁忌
(写真はネットから拾いました)
前方アプローチ後
- 脱臼のリスクが大幅に低下。
- 前方からの手術後には活動制限が通常不要。
- 活動上の注意を実践しなくても、脱臼のリスクに変化がない報告。
人工関節の摩耗と緩み
- 高い衝撃を有する活動は最も避けるべき活動と指摘されてることに注意。
○エクササイズプログラムの作成
レジスタンストレーニング
- 1RMの決定に5-10RMを測定して変換式か推定表を用いる。
- 50%1RMから始め6-8週間かけて80%1RMまで高める。
- 各エクササイズを2-4セット
- 週2-3回
- 休息時間はセット間で2-3分(筋力の最大化が目的)
心臓血管系エクササイズ
- 手術後の最初の8週間は、中強度でゆっくりと長距離を走る。
- 開始当初は予備心拍数の40-60%で時間をかけて漸進的に増加させる。
目標
- 1日に合計20-30分の中程度の有酸素性エクササイズが必要。
- 1回に耐えられるのは5-10分程度であるため、短い有酸素性エクササイズを1日に数回行う必要。
- 体力のあるクライアントは、通常全体で20-30分の有酸素性エクササイズを通して行うことができる。
- 週5日程度行う。
柔軟性エクササイズ
- 股間節の伸展、外旋可動域の不足が長く残存する可能性が示唆されている。
- 柔軟性エクササイズは、可動域に関する注意を尊重し3つの身体平面すべてで行うことが理想。
- 軽いストレッチ感を感じるところで約10秒間その姿勢を保持。
- 各平面で数セットを行う。
- 10-15秒の休息を挟む。
- 1日に2回、週3回の柔軟性ルーティンで、毎日ストレッチングを行うのと同程度に効果がある。
○レクリエーションレベルのスポーツやエクササイズの復帰
- 人工関節の摩耗と構成部品の緩みは活動量や活動強度と直接関係がある。
- 高レベルの活動への参加はリスクがないとはいえない。
- 人工関節の不具合の原因は多岐にわたるが、部品の緩みや摩耗は間違いなく負荷の大きさと頻度に関係がある。
専門家の一致した意見として、手術の3-6 ヵ月後にレクリエーションレベルのスポーツ活動を再開することが推奨。
クライアントの要求と希望に合わせて、特定のすでに習熟している活動への段階的な復帰を検討することを勧められる。
- 90%以上の専門医が手術前に経験があれば許容される活動
ゴルフ、水泳、テニスのダブル、ハイキング、野外サイクリング、ダンス、ボウリング、低インパクトのエアロビクス、トレッドミル、ウェイトマシーン、ステーショナリーバイクなど
- 50%以上の専門医が推奨しなかった活動
ジョギング、武術、テニスのシングル、コンタクト競技、中強度から高強度の有酸素性運動、スノーボード、ラケットボール、スカッシュ、野球、ソフトボールなど
Vol 22 Num 5 Jun 2015 p49-p58
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