従来の肩関節全置換術(TSA:Total Shoulder Arthroplasty)は、変形性肩関節症のある患者には望ましい。
術後の良好な治療成績は、損傷していない、または修復可能なローテーターカフにある程度依存している。
適応症例
- ローテーションの修復不能な大きな断裂を伴う変形性肩関節症。
- TSAの失敗
- 半関節形成術(部分的な肩関節置換)の失敗
- 続発性骨折
- 不安定症
- 腫瘍
○術後のリハビリテーション(理学療法士)
段階
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回数/週
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目標
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Ⅰ
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0-6
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三角巾で固定
PROM - ER30°
PROM - 屈曲90°または肩甲骨面上での拳上
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Ⅱ
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6-12
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PROMからAAROMさらにAROMへの移行
AROMでの適切な肩のメカニックス
三角筋、肩前部の筋群、損傷していないローテーターカフの等尺性筋活動
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Ⅲ
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12-16
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120°までの能動的屈曲
30°までの能動的外旋
三角筋、肩前部の筋群、損傷していないローテーターカフの等尺性筋活動の強化
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Ⅳ
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16+
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家庭におけるエクササイズプログラムの継続
家事やリクリエーション活動の再開
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PROM=受動的可動域、ER=外旋、AAROM=能動的補助可動域、AROM=能動的可動域
注意点と制限
最初の段階は、手術後から始まり術後第6週まで続く
- あらゆる拳上動作、伸展運動、手を背中に回す動作を避ける。
第二段階は手術後第6週間から第12週間
- 内旋と外旋を制限する
- ニュートラルな位置を超えた肩の伸展を避ける
- 後ろポケットに手を伸ばす動作を避ける
第三段階は第12週間から始まり
最終段階の第4段階
- ニュートラルな位置を超えた伸展、押す、引く、持ち上げる動作を突然行う運動。
- 拳上重量の限界は10 - 15ポンド(4.5 - 6.8kg)とする。
○リハビリテーション後のエクササイズの検討事項
後遺症
- 後部ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、場合により小円筋)の損傷がある。
- 損傷していないのは小円筋と肩甲下筋だけである。
- 肩の拳上動作を行うさいは主に三角筋の筋組織に依存。
- 能動的に肩を外旋させる事はほとんど、あるいは完全に出来ない。
- 高頻度で起こる複雑な合併症は、圧迫性の肩峰突起骨折。(三角筋の強化による)
- 完全な可動域は期待出来ない。
- 肩を拳上できる範囲は最大で120°
- 発生頻度が高い合併症のひとつが前方脱臼。
- シャツをズボンの中に入れたり、後方ポケットに手を伸ばす運動は慎重に行う。
- 負荷をかけた内旋動作は避ける。
- 外転、水平伸展、外旋を合わせた姿勢、90/90またはハイファイブ姿勢も避ける。
亜脱臼/脱臼
- ニュートラルポジションを超えて腕を伸展する動作は避ける。
人工関節の摩擦と緩み
- 後方ポケットに手を伸ばすような極端な動作は避ける。
- クローズドキネティックチェーンで肩に負荷がかかる運動は避ける。
- 肩関節形成術後の関節の緩みの原因になる。
○レジスタンストレーニング
適切な肩のメカニックスを保証し、危険な姿勢を意識しながら、三角筋と肩甲骨周囲の筋群そしてローテーターカフ(小円筋、肩甲下筋など)を強化に照準を合わせたレジスタンスプログラムを作成することにより、rTSA後の総合的な機能向上を支援できる。
- 総合的な肩の機能を改善。
- 80-120°の能動的拳上を達成することを目的。
- 三角筋と肩甲骨周囲の筋組織の強化に焦点を合わせる。
- 三角筋への不適切な負荷で肩峰下疲労骨折が起こる可能性を認識。
- 肩甲下筋の活動を最適化。
- 大胸筋と広背筋と大円筋を強化することで内旋を改善。
- 肩を外転する際の主動筋として三角筋の最適な機能を可能に。
- 十分な可動性が無い。(ラットプルダウン、ペクトラルフライなど)
- 安全な選択肢としてシーテッドローやシーテッドチェストプレス。
- トレーニングにはフリーウエイトよりマシーンの使用が望ましい。
- 手術を受けた腕は通常、反対側の腕より若干長いためマシーンを調整する必要もある。
○柔軟性エクササイズ
- 許容できる軟部組織の管理には、筋膜リリース、軟部組織の可動化などが含まれる。
- 人工関節のストレッチは避ける。
- ミリタリープレス、バックスクワット、ラットプルダウン、ストレートバーベンチプレスなど肩の外転、水平伸展、外旋を伴うエクササイズを行わないように注意する。
Voi22 Num5 Jun2015 p27-p35
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